ひろしま建築文化賞

第12回ひろしま建築文化賞受賞作品

第12回ひろしま建築文化賞決定

本表彰は、一般社団法人広島県建築士事務所協会が平成9年から実施し、今回で12回目を迎えました。優れた建築物を設計した広島県内の建築士事務所を表彰することで、広島県内の魅力ある建築とまちづくりに貢献しています。

今回の応募作品数は、一般建築等作品部門14作品、住宅作品部門2作品、建築再生部門8作品の合計24作品でした。現地審査は3月2日に行いました。その結果を踏まえて3月30日の第2回審査会において各賞を決定しましたので、以下にご紹介します。

【第12回ひろしま建築文化賞受賞作品】

賞 名 作 品 名 受賞建築士事務所名
大 賞 広島駅南口ビル ㈱大林組広島支店一級建築士事務所    ㈱東畑建築事務所広島支所
優秀賞 呉信用金庫広島西支店 kufu
優秀賞 あわいが連なる家 ㈱羽田建築設計事務所
入 選 さかみち kufu

【第12回ひろしま建築文化賞審査委員】

委員長 栗﨑 真一郎 広島工業大学工学部建築工学科教授
委 員 岩城 朱美 安田女子大学理工学部建築学科准教授
委 員 藤崎 綾 広島県立美術館学芸課主任学芸員
委 員 桑島 美帆 ㈱中国新聞社編集局クロスメディアセンター文化担当
委 員 豊田 隆雄 (一社)広島県建築士事務所協会会長

《第12回ひろしま建築文化賞受賞作品》

【大賞】 広島駅南口ビル(一般建築部門)

  写真 アイフォト/伊藤彰

■建 設 地  : 広島市南区
■用    途    : 駅、百貨店、ホテル、映画館、駐車場
■構造規模 : 鉄骨造(一部SRC造、RC造、CFT) 地下1階、地上20階
■延床面積 : 113,688.47㎡
■建 築 主  : 西日本旅客鉄道㈱、中国SC開発㈱、㈱ジェイアール西日本ホテル開発、JR西日本不動産開発㈱
■設 計 者(受賞者) : 基本設計:㈱東畑建築事務所広島支所、実施設計:工事監理:㈱大林組広島支店一級建築士事務所
■施 工 者 : 広島駅南口ビル新築他工事特定建設工事共同企業体(㈱大林組、広成建設㈱)

[推薦理由]

広島駅南口ビルは、都市の結節点である広島駅南口において、通過の場を滞在の場へと転換した点が評価された。従来の駅前に求められてきた機能的効率を超え、人の時間や身体感覚に寄り添いながら、都市と建築の関係性を再構成している。大規模開発でありながら、歩行者スケールにおいては居場所や視線の抜けが随所に設けられ、空間に多層的な奥行きを与えている。またファサードも街との連続性を生み出し、広島という土地の文脈を背景に、日常に根差した建築として成立している。さらに、広電の乗り入れを含む動線計画は利用者負荷の軽減に寄与し、都市インフラと建築を統合した新たな駅前建築の指標を示す作品である。   (岩城朱美)

【優秀賞】 あわいが連なる家(住宅部門)

 

写真 野村和慎

■建 設 地 : 呉市吉浦中町
■用    途 : 住宅
■構造規模 : 木造 地上2階建て
■延床面積 : 121.10㎡
■建 築 主 : 個人
■設 計 者(受 賞 者) : ㈱羽田建築設計事務所
■施 工 者 : ㈱Sunsハウジング

【推薦理由】

  人と人、物と物の「間」や移ろう時間を意味する大和言葉「あわい」。その繊細な概念を具現化したような佇まいと住居空間を兼ね備える。傾斜地の住宅密集地でありながら、黒とグレーを基調とした外観デザインは、吉浦の景観に溶け込みながらも静謐な存在感を放つ。窓越しには、街並みや緑豊かな山々が広がり、絶妙な「ズレ」を取り入れた設計でプライバシーを確保しながら、至る所に温かい日の光を導き入れている。自然と調和し、心地良い空間を作りあげた設計からは、作り手の深い洞察と配慮が細部まで行き届いていると感じた。竣工から数年を経てもなお、丁寧な暮らしが息づく空間は、この家が住まい手から愛され、大切にされている証だろう。 (桑島美帆)

【優秀賞】 呉信用金庫広島西支店(一般建築部門)

 

                   ©Koji Fujii / TOREAL

■建 設 地  : 広島市佐伯区五日市中央
■用    途    : 銀行(事務所)
■構造規模 : 鉄骨造 地上2階建て
■延床面積 : 459.73㎡
■建 築 主  : 呉信用金庫
■設 計 者(受賞者) : kufu
■施 工 者 : 大之木建設㈱

【推薦理由】

呉市に本店を構える地域金融機関である呉信用金庫が、隣接する広島市内に14年ぶりとなる新店舗を出店されたものである。敷地は五日市のコイン通り商店街の自動車交通量が多い道路に面し、約2mの歩道を備えた奥行きのある平行四辺形の形状をしている。

周辺は飲食施設が立ち並び、通学する子どもや学生、高齢者など多様な人々が行き交う、人通りの多いエリアである。一方で、一本裏手に入ると閑静な住宅地が広がっている。

本建物は、従来の金融機関に見られる堅いイメージを和らげ、地域に溶け込みながら人々に受け入れやすい印象を与えている。のれんをくぐる入口やガラス越しに開かれたロビー、内外が一体となったベンチの設置など、空間的な工夫が随所に見られる。さらに、夜間にはロビー内のシャッターを閉じながらも、外部へ柔らかな光を放つことで、開放感のある空間を演出している。

また、倉橋産の議院石や竹素材を用いるなど、地域への愛着が感じられる素材選定も評価できる。加えて、設計者の意図が施主側にも十分に共有されており、のれんの運用やロビー空間の積極的な活用が実践されている点も特筆すべきである。

これらの取り組みにより、本建物は地域に寄り添い、住民とのつながりを育む存在として、多くの人々に親しまれることが期待される。今後の金融機関のあり方を示す一例としても、非常に意義深い建築であると評価できる。

(豊田隆雄)

【入選】 さかみち(住宅部門)

   ©Koji Fujii / TOREAL

■建 設 地  : 尾道市向東町
■用    途    : 住宅
■構造規模 : 木造地上1階建て
■延床面積 : 68.33㎡
■建 築 主  : 個人
■設 計 者(受賞者) : kufu
■施 工 者 : 大和建設㈱

【推薦理由】

さかみちは、住宅でありながら「建築=地面の操作」として成立している点において、非常に明快で強度の高い提案である。外部から連続する緩やかな屋根は、建築を登るものとして経験させる。この操作により、建築は単なる内部空間ではなく、身体的な運動を伴う地形的存在へと転換される。スロープ状の屋根がそのままランドスケープへと溶け込む様子は、建築と外構の境界を曖昧化し、敷地全体をひとつの環境として統合している。

大開口によって庭と連続した室内空間は、明確な用途分節を持たない代わりに、人の集まり方や距離感によって空間が編成される。高齢夫婦の静かな生活から多人数の集まりまでを受け止める柔軟性をもつ。

本作は、住むための箱ではなく、関係や出来事を受け止める地形として住宅を再定義した点において評価に値する。建築のスケールを超えて、風景と身体の関係を問い直す、現代的かつ力強い住宅である。  (岩城朱美)

【現地審査・審査会】

 

 

《第12回ひろしま建築文化賞 総評》

 審査委員長(コーディネーター) 栗﨑真一郎

ひろしま建築文化賞は、今回で12回目を迎え、本年度は24作品の応募があった。内訳は、住宅部門2作品、建築再生部門8作品、その他建築部門14作品であり、規模や用途、立地条件も多岐にわたる構成となった。審査は、まずパネルによる一次審査を行い5作品選定した後、現地審査を経て最終審査を実施した。

個々の作品についての詳細な評価は、それぞれの選評に委ねたいが、全体として丁寧につくられた力作が多く、審査においては単純な優劣を競うというよりも、設計に対する姿勢や価値観の違いが浮き彫りになる場面が多かった。どちらが優れているかという議論ではなく、どのような建築的アプローチが現在の社会や状況を的確に捉えているかが問われていたように思う。

新築か再生か、都市部か中山間地域か、さらには規模や建設コストといった条件も大きく異なり、これらを同じ土俵で評価することの難しさをあらためて実感した。とりわけ個人的には、建築再生部門から今回表彰作が選ばれなかったことを残念に感じている。

数ある建築賞の中でも、本賞は、建築を単なる「もの」としてではなく、そこから生まれる「こと」や社会との関わりを含めて評価しようとする点に特徴がある。審査員の顔ぶれから見ても、その姿勢は一貫しており、今後も広島の建築文化を多角的に捉える賞として発展していくことを期待したい。

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